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専門医のおはなし髙倉百々子先生:アクロメガリー広報センター:ノバルティスファーマ

「矯正歯科治療とアクロメガリー(先端巨大症)」

髙倉 百々子先生

たかくら矯正歯科クリニック 髙倉 百々子先生
院長

髙倉先生は矯正歯科がご専門ですが、アクロメガリー(先端巨大症)になると口腔・歯科関連ではどのような影響が出てくるのでしょうか?

成長ホルモン(GH)の過剰分泌によって骨や、舌・くちびる・鼻などの軟組織が肥大するため、噛み合わせが変化することがあります。代表的な例が「受け口(反対咬合)」ですが、これは下あごの骨が下に伸び、さらに前に出るため、受け口に変わってくるのです。あごは横方向にも広がるため、口の中が全体的に大きくなります。また、あごが大きくなるということは歯が生えている土台が大きくなるということですから、歯と歯の隙間が広がります。いわゆる「すきっ歯(空隙歯列)」です。さらに歯が前に傾斜することもありますが、これは舌が大きくなったために歯を前に押すからだと考えられます。

歯科でアクロメガリーが発見されるケースとしては、どのような例がありますか?

受け口やあごの伸長から発見されることが多いようです。また、咬み合わせが変わるため、虫歯にかぶせた冠や入れ歯、ブリッジなどを何度も作り直すケースからアクロメガリーが疑われることもあります。GHの過剰分泌が続いている間はあご骨の変形が進むため、すぐに合わなくなるのです。

受け口はおでこの突出と共に、アクロメガリーの典型的な顔つきと言われますね。*

* アクロメガリーに見られる典型的な症状はこちら

はい。ただ、必ずしもアクロメガリーの患者さん全員が受け口になるとは限りません。以前、私が、54名の患者さんに協力を得て、歯形をとらせていただいたところ、受け口だけではなく、出っ歯(上顎前突)や切端咬合(上下の歯の先端がちょうどぶつかる状態)もかなりの割合にのぼりました。中には、噛み合わせが正常な方もいました。

男性 女性
下顎前突 11人 3人 14人
切端咬合 2人 10人 12人
上顎前突 6人 6人 12人
下顎前突 11人 3人 14人
不明(義歯などのため) 7人 4人 11人
28人 26人 54人

(髙倉百々子先生らの研究より Int J Adult Orthod Orthognath Surg Vol.13, No.4, 1998)

噛み合わせが変化したり、すきっ歯になったりした場合は、すぐにアクロメガリーを疑った方がよいでしょうか?

子どもの頃に矯正をした場合、大人になって歯列が変化することがあります。これは、親知らずや、元の噛み合わせに戻ろうとするためです。また、すきっ歯は歯周病などが原因でなる場合もあります。
これらの原因とアクロメガリーを区別するポイントは、「舌が大きく(厚く)なったか」「顔つきが変わっていないか」「手足の肥大がないか」などその他のアクロメガリーと疑われる兆候があらわれているかどうかです。昔の写真と比べてみるとわかりやすいでしょう。このポイントに当てはまるときは、一度、内分泌内科や脳神経外科の医師に相談してみてください。

アクロメガリーによる噛み合わせの変化を治したいときは、どのような治療を、どこで受ければよいのでしょう?

治療には歯並びを修正する歯列矯正と、あご骨を切って噛み合わせを治す外科手術があります。矯正歯科の認定医および専門医を探す場合は、日本矯正歯科学会(http://www.jos.gr.jp/)や、日本臨床矯正歯科医会のホームページ(http://www.orthod.or.jp/)からお近くの矯正歯科医のいる病院を探すことができます。外科手術を希望する場合は、口腔外科のある病院などで治療を受けていただくことになります。
治療のタイミングとしては、脳神経外科や内分泌内科での治療が終わって、GH値が正常に戻ってからがよいでしょう。そうでないと、せっかく矯正をしてもまたGHの影響を受けてしまうからです。アクロメガリーの主治医の先生と相談して、矯正歯科治療開始のタイミングを決めることをお勧めします。

アクロメガリーによる歯列矯正の治療費は、保険が適用されますか?

外科手術を伴う場合は特定の施設であれば*、保険が適用されます。それ以外の矯正は私費治療になります。

* 保険適応内で外科手術を実施できるのは、「顎口腔機能診断施設」とよばれる医療機関に限られます

アクロメガリーは早期発見が難しい病気とされていますが、矯正歯科専門医の立場で潜在患者さんを発見するポイントはありますか?

アクロメガリーは希少な病気のためそうそう出会う症例ではありませんが、矯正歯科治療は、長期に渡り患者さんを診ていくため、一度の診察だけでは分かりにくいような緩やかな変化にも気づいてあげられるとよいと思っています。
具体的には、歯並びを治療に来る患者さんのなかで、受け口やあごの伸長など、アクロメガリーが疑われる症状をお持ちの方や、入れ歯やブリッジの作り直しが頻繁に必要な方には、下記の点について問診を行うようにしています。

  • 昔と比べて顔つきに変化はないか
  • 20歳を過ぎても身長が伸びていないか
  • 手足の肥大があるかどうか
  • 噛み合わせ以外に、何か体調の変化はないか

舌の大きさ・厚さも参考になります。また、矯正歯科治療の場合は必ず頭部X線撮影を行いますが、そこでトルコ鞍や前頭洞が大きい場合はアクロメガリーの可能性があります。
アクロメガリーの場合、患者さんを紹介できる近隣の脳神経外科や内分泌内科とも連絡がとれるようにしています。
患者さんと長期間にわたってつきあっていく矯正歯科医だからこそ、症状の進行が緩やかなため、見逃されがちなアクロメガリーの発見の機会となることを願っています。

たかくら矯正歯科クリニック 院長 髙倉 百々子先生 略歴
昭和63年 昭和大学歯学部卒業
同年 東京医科歯科大学歯学部付属病院第一補綴科
平成2年 東京医科歯科大学歯学部付属病院第ニ矯正科
平成6年 東京大学医学部 顎口腔外科・歯科矯正歯科 学位(医学博士号)取得
平成11年 日本矯正歯科学会 認定医取得
平成15年 たかくら矯正歯科クリニック 開設

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