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専門医のおはなし島津章先生:アクロメガリー広報センター

「ホルモンのお話~脳下垂体に関連して」

島津 章 先生

独立行政法人 国立病院機構京都医療センター 島津 章 先生
臨床研究センター長

アクロメガリーは脳下垂体(下垂体)に良性の腫瘍(腺腫)ができることによって引き起こされる病気ですが、そもそも脳下垂体とはどのような働きをしている器官なのでしょうか?

脳下垂体は“ホルモンの司令塔”とも呼ばれる器官で、脳底の下面にぶら下がっており、視床下部から調整の指令を受けて体内の器官に作用するさまざまな(内分泌の)ホルモンを分泌しています。脳下垂体は前葉と後葉の2つの部分に分かれており、前葉からは成長ホルモン(GH)プロラクチン(PRL)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)性腺刺激ホルモン(LH、FSH)を、後葉からは抗利尿ホルモン(ADH)子宮収縮ホルモン(オキシトシン)を分泌しています。 脳下垂体腺腫には、特定のホルモンを過剰に分泌するタイプのものと、明らかなホルモンを分泌しないタイプがあります。どちらのタイプであっても、大きくなって正常の下垂体を圧迫すると、脳下垂体の“司令塔”としての正常な機能が失われてしまいます。

脳下垂体が関わっているホルモンの働きを教えてください。またホルモン分泌量が少なかったり多かったりすると、どのような症状が出るのでしょうか?

ホルモンはごく微量で体に作用し、狭い範囲(基準範囲)内でうまく調節されています。多すぎても少なすぎても、体に変調をきたしてしまいます。ですから体の状態を調べるためにホルモン濃度をチェックすることは、とても重要です。また、大体の基準値を知っておくことも大切です。 それぞれのホルモンの働きや基準値を表にまとめましたので、参考にしてください。

ホルモン 働き 基準値 欠乏や過剰分泌で
起きる症状
成長ホルモン (GH) 小児期から思春期にかけての成長を促します。成人になってからは全身の代謝の調節、体組成、脂肪燃焼、筋肉の維持などの働きをします。 血中GHは5ng/ml以下 小児で欠乏すると低身長になり、過剰だと巨人症になります。大人になってから過剰分泌されると、手足の骨や軟部組織が肥大する「アクロメガリー」になります
プロラクチン
(PRL)
分娩後に母乳を出す働きをし、このホルモンが大量に分泌されている間は月経が止まります。 20-30ng/ml以下 「プロラクチノーマ」から過剰に分泌されます。プロラクチノーマは女性に圧倒的に多くみられ、妊娠していないのに乳汁が出たり、月経が止まったり、不順になったりします。
副腎皮質刺激ホルモン
(ACTH)
副腎に指令して副腎皮質ステロイドホルモンを分泌させる働きをします。男女とも生涯必要なホルモンです。 10-60pg/ml 欠乏により、倦怠感、疲れやすい、食欲不振、意識障害、低血糖、体重減少などが起きます。過剰だと「クッシング病」になります。
甲状腺刺激ホルモン
(TSH)
甲状腺に指令して甲状腺ホルモンを分泌させる働きをします。熱産生、エネルギー代謝、成長発育に関与します。 0.53-4.43μIU/ml 欠乏すると、寒さに弱くなる、不活発、うつ気分、便秘、皮膚乾燥、脱毛などが起きます。
性腺刺激ホルモン
(LH、FSH)
黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の2種類があります。男性の睾丸、女性の卵巣に働きかけ、それぞれの性ステロイドホルモンの分泌を促します。さらに精子や卵子の正常な発育にも重要なホルモンです。小児期ではきわめて低値で、思春期の前から次第に分泌が増加します。 【LH】
男性:1.6~9.5mIU/ml
女性:性周期により大きく変化します。卵胞期や黄体期は0.4~14 mIU/mlで、排卵期は、27.0~66.3 mIU/mlと高くなります。
閉経後も9.2~37.7 mIU/mlと高くなります。

【FSH】
男性:1.2~8.2 mIU/ml
女性:性周期により大きく変化します。卵胞期や黄体期は3.2~10.2 mIU/ml,1.3~8.4 mIU/mlで、排卵期は 8.0~17.7 mIU/mlと高くなります。
閉経後も26.2~65.5 mIU/mlと高くなります。
欠乏すると、二次性徴の欠如/進行停止、月経異常、性欲低下、インポテンツ、不妊、恥毛・腋毛の脱落、性器萎縮、乳房萎縮などが起きます。
抗利尿ホルモン
(ADH)
腎臓に働いてて尿を濃縮して量を減らします。血圧上昇させる作用もあります。男女とも生涯必要なホルモンです。 0.3-4.2pg/ml 欠乏すると、口渇、多飲、多尿がおき、「尿崩症」と呼ばれます。

ホルモン値の測定検査を受けるときに、留意することはありますか?

ホルモンによっては食事、運動、睡眠、ストレスなどの影響を受けて短時間で変動するものもありますし、1日の内で分泌量が大きく変わる“日内リズム”を持つホルモンもあります。したがって、1回測った検査結果だけから一喜一憂するのは好ましくありません。特に成長ホルモン(GH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、分単位でも数値が上下します。この場合、何度か測ることで、数値の動きを参考にします。
また、「成長ホルモン(GH)とソマトメジンC(IGF-1)」、「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)とコルチゾール」などホルモンはペアで動きますので、一つのホルモンだけを測るのではなく関連するホルモンを一緒に調べることが肝要だということも、ぜひ知っておいていただきたいことです。

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